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最高裁判所第一小法廷 昭和37年(オ)347号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人古川清箕の上告理由第一点について。

本件家屋につき、昭和二九年七月以降においては、その破損、腐蝕等の状況は、居住の用に耐えない程、あるいは、居住に著しい支障を生ずる程に至つていないとした原審の認定は、挙示の証拠に照らし是認できないことはなく、また、その賃料が地代家賃統制令の統制に服するものであることは原審の確定するところである。以上の事実関係の下においては、被上告人の修繕義務の不履行を理由に、賃料全部の支払を拒むことを得ないとした原審の判断は正当と認められ、所論民法六〇六条一項の解釈を誤つた違法ありとすることはできない。それ故、所論は採るを得ない。

同第二点について。

本件弁論の全趣旨から見て、被上告人の請求は、原判決判示のごとく利得額の返還を求める請求を含む趣旨と解し得ないわけではなく、この点につき原判決には、所論の違法は認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斉藤朔郎 裁判官 長部謹吾)

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